総入れ歯に1本だけインプラント、その後レジリエンツ・テレスコープ
インプラントは体にとってはやはり異物なので、多数入れるのは気が引けます。
しかし、総入れ歯の場合、1本だけでも入れると、安定感・吸着感が全く違ってきて、よく噛めるようになります!
全身状態(例えば糖尿病)の問題、予算の問題でインプラントを少なめにしたい方にはおススメの方法です。
初診時です。
上の残っている2本の歯は歯周病で残すことは不可能です。
下の歯に関しては、歯並びが前後的に崩れていたため、この歯並びに合わせて上の入れ歯を装着すると、入れ歯がガタついて落ちてきてしまいます。
咬合器という咬み合わせを調べる器械で分析して、入れ歯の製作と下の歯並びの修正をしました。
上は新しく入れ歯を作り直し、下の歯にはとりあえずプラスチックの被せ物を今ある歯の上に貼り付けて、まずは噛めるようにしました。
その後、上の残せそうにない歯を抜歯し、上は歯が1本もない状態になりました。
総入れ歯でもかみ合わせがうまくいけば、なかなか噛めるのですが、より一層固いものでも噛めるようにするために1本だけインプラントを入れることにしました。
完成したところです。
この金属部分がインプラントです。インプラントにレジリエンツテレスコープを取り付けています。
金色の金属部分がインプラントにはまります。
横から見た歯並びも整っていると思います。
焼肉でもステーキでも大抵の物は食べられる、と高い評価をしていただきました。
インプラント21万円 + レジリエンツテレスコープ16万円 + チタン床総入れ歯30万円 =67万円(+税) でした。
その他保険の虫歯治療の費用が数万円程度かかっています。
下顎コーヌス義歯を気に入った方が上顎をレジリエンツ義歯にした症例
過去に コーヌス・テレスコープ・デンチャー を下顎に装着された方です。
当時から上の歯の状態はあまりよくありませんでした。きれいな歯並びにする為に上の歯も治療したかったのですが、当時は患者さんの希望もあり、手を付けることができませんでした。
下顎にコーヌステレスコープデンチャーを入れてから約7年たち、上の歯がかなりグラついてきたのを機に、上顎もテレスコープデンチャーを希望されました。
術前です。
残せる歯は右2本、左1本の3本だけでした。3本ではコーヌステレスコープデンチャーは難しいです。
そこで レジリエンツ・テレスコープ・デンチャー にしました。
装着正面観と義歯を外した上顎の状態です。残っている歯の本数は3本です。その3本に被せ物をしています。
装着した義歯です。義歯の被せ物部分が歯にはまります。
全く動かない、グラグラしていた自分の歯より遥かに噛める とおっしゃっていただきました。
7年前に作った下顎のコーヌス・テレスコープ・デンチャーです。乱れた上顎の歯並びに合わせて並べた下顎の歯は、今回綺麗な歯並びにするために、歯の上にプラスチック(レジン)を盛り足しました。
今までの経験上、前歯だけが残っている患者さんの方が、テレスコープ義歯の治療が難しい様な気がします。
作り直さずに長期間使用できる入れ歯
連結した被せ物(ブリッジ)の欠点
「一度作ったら長期間作り直さずに使える、噛める歯を作ってほしい」という依頼の40代の方です。
写真です。
これの何が問題なのでしょうか?
実は連結している被せ物が一気に抜け落ちてしまったのです。
被せ物だけが外れたのではありません。
歯の根ごと取れたのです。
しかも被せ物のかぶっていた歯は以下の状態です。
残せる歯、残せない歯を図示すると以下のようになります。
誰しも入れ歯になるのは嫌です。
そのため、「何とか被せ物でつなげてください!」とおっしゃって、つなげた被せ物:ブリッジにします。
ところがブリッジには大きな欠点があります。
つなげた歯が1本でも悪くなったら、 総取り換え・全部やり直し になることが多いという事です。
患者さんは3~4年前に80万円ほどかけて、この被せ物を作ったそうです。
なぜこれほどの費用がかかったかというと、前歯が5本連続で欠損していた為、保険適応外だったからです。
保険でのつなげた歯(ブリッジ)は、3本以上の連続欠損に対しては力学的に問題がある為、適応外となります。(例外的に下の前歯は4本連続で欠損していても保険適応のケースがあります。)
しかしそれでも入れ歯が嫌であったため、ブリッジにされました。
インプラントという手段もあったのでしょうが、費用は150万(30万円×5本、東京ならば40万円×5本)を超える可能性があります。
結果、3年で80万円が無となりました。
以上のような経緯があった為、「一度作ったら長期間作り直さずに使える、噛める歯を作ってほしい」という希望になりました。
「例え現在残っている歯がすべて無くなったとしても、それでも使える入れ歯」 ということで、当医院ではテレスコープデンチャーを計画いたしました。
インプラントでは費用があまりに高額になってしまったからです。
吸い付きが強くて動かない入れ歯
まず、残った歯に入れ歯との接続装置となる、レジリエンツ・テレスコープ内冠を装着しました。専門的な話になりますが、コーヌス・テレスコープ内冠ではありません。
次に入れ歯の型取りを行いました。
あごの土手の形を型取りするだけではなく、唇の位置まで型取り材で記録します。
こうすることで、唇に調和した前歯の位置を知ることができます。
完成した義歯:レジリエンツ・テレスコープ・デンチャーです。
この金属部分に、歯に着けたレジリエンツ・テレスコープ内冠がはまり込みます。
装着した状態です。
全く落ちてきません。
焼き肉でもとんかつでも、なんでも噛めます、召し上がれます。
はずす時は口に少し水を含み、両手を使って引き剥がす様にされていました。
両手を使う程強く口の中にはまっていますが、残っている歯にはほとんど力は加わっていません。精密に作られた入れ歯であるため、入れ歯と歯ぐきとの間の空気がかなりの程度抜け、吸盤のような状態になっている為、はずれないのです。
また、2枚のガラス板の間に水をたらすと、2枚のガラス板がくっつくのと同様の作用もあります。
天井をなくすことはできるでしょうか?後ろを短くできるでしょうか?
おえっとなりやすいのです。
入れ歯を製作すると必ず言われる言葉があります。それが 「天井をなくすことはできるでしょうか?後ろを短くできるでしょうか?おえっとなりやすいのです。」 という言葉です。
天井をくりぬくと、たとえ金属の入れ歯でも、真ん中から割れることがあります。
プラスチックの保険の入れ歯ならなおさらです。
総義歯の場合、吸着は後ろの縁での封鎖によって行われるため、後ろを短くしたり天井をなくしたりすると入れ歯が簡単に落ちてくるようになります。
しかし、心配しないでください。
この入れ歯はほとんど全くと言ってよいほど動かないため、天井があってもほとんど気になりません。
パカパカ動くと粘膜を刺激して、嘔吐反射が出ます。
しかし全く動かなければ、気にならなくなってきます。
肩を叩かれることを想像してみて下さい。
ポンポン肩を叩かれ続けられると、気になります。
それに対し、シップの様に肩に貼り付けたままの物は、気になりません。
入れ歯も同様で、動かず貼り付いた状態の物は、気になりません。
ですから、「天井があって嘔吐感が強い、でもインプラントはできない。」という方にも、このレジリエンツ・テレスコープ・デンチャーはおすすめできると思います。
歯が1本も残っていない本当の総義歯の方で嘔吐感の強い方は、流石にできません。インプラントを2~4本入れた上でレジリエンツ・テレスコープ・デンチャーをおすすめいたします。
費用およびインプラントと比較したメリット・デメリット
この方には歯が4本ありました。そのため以下の金額となりました。
テレスコープ部@16万円×4本=64万円
義歯部チタン床=30万円
小計94万円
8%消費税=75,200円
総額1,015,200円
これをインプラントと比較します。
ケース1:欠損した歯にすべてインプラント:欠損歯数10本×30万円=300万円
ケース2:欠損した歯に1本おきにインプラント:インプラント5本×30万円=150万円
この金額にサイナスリフトという骨を作る治療が必要で、20~50万円ほどかかります。
ケース3:オール オン 4(All on 4):200万~250万 ただし、オール オン 4の場合、左右の一番後ろの奥歯はありません。
金額の上では明らかなメリットがあると思います。
テレスコープ・デンチャーは「削った、被せた」といった、一般の方が思い描く歯科の治療で製作することができます。
それに対して、インプラントは「歯ぐきをめくった、骨を削った・穴をあけた、骨や肉を作った」など、大きな外科処置を伴います。CTの発達で外科処置は小さくなってはきていますが、それでも外科処置は必要です。外科処置は劇的な治療結果を見せてくれますが、失敗した時の結果も劇的です。失敗した時医者の技術がすべて悪いように言われますが、天下の名医でも患者さんの体質によってはうまくいかないこともあります。外科処置は失敗した際の肉体と時間の喪失が大きいと思います。
テレスコープ・デンチャーの場合、残っている歯を失うことになっても、作り直さずそのまま使用できます。たとえすべての歯を失っても、総入れ歯として使用できます。
それに対しインプラントの場合は、インプラントが悪くなった時にはそれを除去しなければなりませんし、被せ物も作り直さなければなりません。
介護担当者・看護士からの意見
私は現在(平成26年7月)浜松市歯科医師会において在宅介護・在宅歯科診療の関係の仕事をしています。
その関係でケアマネや看護士とお話をする機会があります。
それらの方との懇話会で、看護士の方から「インプラントは本当にいいものなのですか?」と質問されたことがありました。終末医療の現場において、インプラントは体を化膿させる異物として作用している場合があるのです。歯も体を化膿させる異物として作用することがあります。介護の現場では総入れ歯が一番衛生管理を行いやすいとのことです。抜歯はかなり体が弱った方でも何とかできます。しかし、インプラントを抜くことはかなり難しいです。介護の現場に立ち入った時、インプラントは数本にとどめておいた方が良いのではと思います。
歯に合せて入れ歯を作るのではなく、入れ歯に合せて歯を作りかえる治療
「何度入れ歯を作っても痛くてはめられない、しばらく放置していたらもっと歯が悪くなった」
という60代女性です。
部分入れ歯で大切なことは、
歯に合わせて入れ歯を作るのではなく、入れ歯に合わせた歯を作るという事です。
形が悪くて入れ歯のバネがかかりにくい歯に合わせて入れ歯を作るというのは、
下のレベルに合わせて全体を引き下げるという事です。
入れ歯のバネがかかりやすいように歯を作りかえるというのは、
高いレベルを目指して一部のダメな物を引き上げていくという事です。
もちろん 歯を削る というダメージを負わせることにはなります。
かぶせ物を作る分だけ保険治療であっても、治療期間が長く、費用が高くなります。
しかし、作っても作ってもいくら調整しても痛みがあるというならば、
いっそ歯を削ってでも快適に使えるようにした方が良いのではないかと思います。
入れ歯が合わないのだから入れ歯だけ作り直してほしい とおっしゃる方がいますが、
入れ歯が悪いのではなく、入れ歯が入れられないような歯の状況が悪いという方がほとんどだと思います。
そのため、「歯は削らないでほしい、入れ歯だけ作ってほしい、
すぐに噛めるようにしてほしい」という方は非常に治療が難しいです。
治療後
入れ歯のばねがかかるところにかぶせ物をしています。
入れ歯のばねがかかりやすいように、本来の歯の形と若干形を変えています。
入歯装着
入れ歯を入れたところです。
装着日の診療時間は5分でした。痛みなく、スポッと入りました。
1週間後の調整時間は10分でした。 ちょっと痛むところがあるというので、その場所を削りました。
その後は問題なく使えているとのことです。
今後は前歯の虫歯を治療していきます。
このようにうまくいった理由として患者さんが歯を削ることに同意してくださったこと、
咬み合わせの分析をしてくださったこと、
協力的で治療の限界に対して理解があったことがあげられると思います。
上あごの歯並びのデコボコを修整する保険治療
上あごの歯並びのデコボコを修整する
入れ歯が合わないという事で来院された方の写真です。
これだけではどうして入れ歯が合わないのかわかりません。
そこで フェースボー および 咬合器という機器を用いて入れ歯や歯並びを分析します。
結果
歯並びを横から見た時、カンペル平面と呼ばれる平面に近似した所に歯が並んでいると、
入れ歯は安定し、自分の歯ならば力が歯の植立方向にうまく力がかかると言われています。
この金属台の平面がカンペル平面とほぼ平行です。
この症例の場合、後ろへ歯ならびが傾いていることがわかりました。
かみこむ力はこの写真における垂直方向にかかります。
そのため、このかみ合わせでかみこむと、上の前歯にばかり力がかかってしまい、
痛みだけでなく、入れ歯が後ろから外れてきてしまうことが考えられました。
また、前後の傾きのほかに、左右差もありました。
おそらく咬むたびに向かって左に顎が捻り込まれるであろうことが考えられました。
これを修正していきます。
歯並び修正
歯並びの平面が金属台と平行になってきたのがお分かり頂けるでしょうか?
術前と術後の写真
術前
術後
このように歯並びの前後差・左右差を少なくし、カンペル平面に近似した平面を作ることで、
保険でも安定する入れ歯つくりを目指しています。
道路と車を想像してください。
どんなに高級で性能の良い車に乗っても、道路が舗装されていなければ車はガタガタと揺れてしまいます。
安い中古の軽自動車でも、道路が舗装されていれば滑らかに車は走ります。
上あごの歯並びがデコボコならば、下の入れ歯はガタガタと揺れてしまいます。逆も同じです。
入れ歯が合わない方は、まず、歯並びのデコボコを修正してください。
このことは自費の入れ歯でも同様です。
同じ自費治療でも全体の歯並びを修正すると、さらに使い勝手が良くなります。
その他の例
治療前
治療後
左から術前(大きく後ろに傾く)、修正、術後(平面に近づく)
糖尿病のため、外科処置を避けたい症例
リーゲル・テレスコープ・デンチャー症例2
60代後半の女性。入れ歯で物が噛めないとの事で来院されました。
術前写真
術前写真です。下の入れ歯ははずしております。
上あごの前歯の方は写真ではわかりませんが、歯茎の土手が全く無く、
かろうじて残っている歯茎の土手はふにゃふにゃの柔らかい肉です。
非常に難しい総入れ歯の症例と思われます。(一般的には入れ歯は上より下のほうが難しい。)
インプラントを2本ほど埋入して、それを支えに入れ歯を安定する方法を考えました。
しかし、大きな問題がありました。糖尿病だったのです。
糖尿病でも管理されていれば問題ないのですが、
投薬を受けていてもHbA1cという糖尿病の重さをはかる値がどうしても下がりませんでした。
糖尿病が重篤だと、傷の治りが悪く化膿しやすい為、インプラントが失敗する可能性が高まります。
仮に成功しても、将来化膿するリスクが非常に高いです。
そのため、大きな外科処置を可能な限り避け、義歯にて対応することとしました。
義歯製作
製作途中の写真です。
咬合器という機器を用いて作成しました。
咬合器は頭蓋骨の中における歯の位置をおおよそではありますが再現できる機器です。
この機器にて、理想的な位置に歯を作っていくと、入れ歯にかかる力を入れ歯がはずれない方向に調整しやすくなります。
上は総義歯(総入れ歯)、下はリーゲルテレスコープデンチャーとなりました。
義歯完成
完成した所です。
口の中で全く動くことなく食事をすることができます。
内側のレバーをはずすと、義歯をはずすことができます。
「食事に不自由はありません。たくあんも食べることができます。」とおっしゃってて頂けました。
義歯を作る前から、下の入れ歯は動かないようにすることはできると思っていました。
問題は上の入れ歯でした。食事は不自由ないとのことでしたが、しゃべる時にたまに落ちることがあるとのことでした。
普通、上顎の義歯を落ちないようにするのは下の入れ歯を作るより簡単なのですが、この場合は本当に顎の土手が無いため、これ以上は難しいことを説明し、納得していただきました。
食事に不自由が無いのが何よりでした。
リーゲルテレスコープ義歯はインプラントと比較して、
確かに出し入れの面倒くささあります。しかし、
大きな外科処置をしなくてもよい。
有病者・高齢者にもできる。
治療による体への負担が小さい。
インプラントほどではないが、動かないのでしっかり食事をすることができる。
取り外しをするので、清掃しやすい。
取り外しをするので、介護者による口腔ケアがしやすい。
といった利点もたくさんあります。
費用は
上顎:金属床総義歯:¥250,000
下顎: :¥1,420,000でした。(税別)
下顎の部分入れ歯(部分義歯:リーゲルテレスコープデンチャー)
内訳は以下の通りです。
かぶせ物の部分:¥160,000×5本=¥800,000
義歯の部分 :¥200,000×1床=¥200,000
レバーの部分 :¥ 50,000×2個=¥100,000
レバーの軸部 :¥160,000×2個=¥320,000
総額 ¥1,420,000
歯科医師から一言
どんな治療方法にせよ、利点と欠点は必ずあります。
テレスコープデンチャーは入れ歯と被せ物を一体化した形の入れ歯です。
入れ歯という物体が、口の中に入るということが欠点かと思います。
しかし、以下の様な利点があります。
1.残っている歯の本数が少ないほど(失った歯が多いほど)、
治療回数が少なく、かつ、治療費を抑えることができます。
(インプラントや他の治療は残存歯が少ないほど治療費がかかります。)
(逆に2本くらいの歯の欠損の場合、インプラントの方が治療費を抑えられることもあります。)
2.従来の入れ歯は、バネのかかっている歯がダメになると作り直しをしなければなりませんが、
テレスコープデンチャーは修理して使えます。壊れないわけではありませんが、修理して長く使えます。
3.従来の入れ歯はバネでひっかけているので動きがありますがテレスコープデンチャーは動きが少ない。
4.動きが少ないのでよくかめます。
5.動きが少ないので異物感が少ない。
6.特別な外科処置、手術を必要としません。普通の歯科治療の範囲でできます。
よって高齢者、高血圧や糖尿病の方、その他の有病者、
インプラントをするには難しいと言われた方でもできます。
7.清掃がしやすい。介護をする方も、される方も非常に楽です。
口の中の衛生状態が、さまざまな全身疾患をひきおこすことが分かってきた現在、これは重要なことと思います。
インプラントで大きな外科手術(サイナスリフト)を避けたい人の為の症例
リーゲル・テレスコープ・デンチャー 症例1
歯がグラグラして、かむと痛い
60代男性。インターネットをご覧になり、
来院されました。
初診時
「奥歯がグラグラして、かむと痛い」とのことでした。手で触ってもコマのように動きます。
オペラデンタルにいらっしゃる前に、2軒ほど他の医院にいらしたそうです。
歯を残せないのは本人も覚悟されていました。
患者様の希望は抜歯した後インプラントとすることなのですが、両方の医院から「それは難しい、入れ歯にした方が・・・」と診断されたとのことでした。
入れ歯は入れたことがなく、強い抵抗感を感じたため、
インターネットを介してオペラデンタルにいらっしゃいました。
一番奥の歯の根が、だいぶ露出しています。それだけ骨がなくなってしまったということです。
レントゲン写真:骨の量
歯の全体写真です。
赤丸で囲った部分が問題の部分です。
拡大します。
赤線より上があごの骨です。
緑の斜線がひかれた部分は上顎洞と呼ばれる空洞です。
上顎洞は眼の下にある大きな空洞で、蓄膿症になったときに膿がたまる場所です。
つまり、この患者様の場合、あごの骨がなくなってしまい、
上顎洞と口の中をさえぎる骨の厚みは紙一枚といった状態になってしまっているのです。
この状態でインプラントを埋入すると、インプラントが上顎洞に突き抜けて、
人為的に蓄膿症を起こしてしまいます。
もちろん、その空洞の中に骨を作り、
作った骨の中にインプラントを打ち込むと言う方法もあります。(サイナスリフト)
しかし、それは一般歯科ではなく口腔外科手術の類になってしまいます。
間違いなく腫れと痛みが出ます。また、それだけやっても、インプラントができないこともあります。
もし、サイナスリフトやソケットリフトを希望されるなら病院紹介と言う形になります。
さらに付け加えて、今回の症例では顎の土手もなくなっていました。
土手を作る為には(GBR)という骨を作る手術もしなければなりません。
仮に骨を作る事に成功したとしても、その骨が十数年も存在しているとも限りません。
吸収してなくなってしまう可能性もあります。以上を説明いたしました。
患者様は全身的な疾患の関係もあり、手術はためらいを感じるとのことでした。
そこでオペラデンタルでは、ハイリスク・ハイリターンのインプラントではなく、
ローリスク・ハイリターンのテレスコープデンチャーを提案いたしました。
注):この患者様にとってのインプラント治療がハイリスクと言うだけであって、
インプラント治療自体がハイリスクと言うわけではありません。
事実、オペラデンタルでもインプラント治療は行っております。
抜歯した状態
抜歯した状態です。
あごの骨が大きく陥没しているのがおわかり頂けるでしょうか。
完成した義歯
完成した義歯です。
「なんですか、このレバーは?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
このレバーをリーゲルといい、これがついた義歯をリーゲル・テレスコープ・デンチャーといいます。
コーヌス・テレスコープ・デンチャーと同じく、ドイツで開発された入れ歯の最終進化形といえるものです。
これを越える機能を持つ人工物はインプラントくらいかと思われます。
はめる時はリーゲルを開き、
リーゲルを閉じると外れなくなります。
義歯装着
コーヌス・テレスコープ・デンチャーは入れ歯を出し入れする時、歯に引き抜く力がかかります。
しかし、リーゲル・テレスコープ・デンチャーの場合、歯に引き抜く力は全くかかりません。
そのため、ぐらつきのない歯であるならば、コーヌスよりもリーゲルのほうが歯に優しく、
歯を残しやすいのです。
しかし、たった一つ欠点があります。手先が器用でない方、
例えば脳梗塞などで手が不自由になった方の場合、
リーゲル・テレスコープ・デンチャーをはずすのは一苦労になってしまうのです。
費用は\890,000(税別)でした。
内訳は以下の通りです。
被せ物の部分 :\160,000×3本
レバーの部分 :\50,000
レバー軸部の歯 :\160,000×1本
義歯の部分 :\200,000
義歯装着前
義歯装着後
義歯が入っているのがおわかりになるでしょうか。
インプラントとの比較
もし、インプラント治療だったならば、
サイナスリフト¥400,000、
GBR\200,000、
インプラント¥300,000×2本、
合計¥1,200,000(+税)が浜松の相場ではなかったかと思います。
東京ならばもっと高いでしょう。そして作った骨も永続するかどうかはわかりません。
確かに保険治療と比較したならば高額な治療ですが、
機能性、安全性、永続性、衛生性において非常に良い治療ではないかと思います。
患者様からの声
インプラントができず、入れ歯にしなければならないと言われた時はショックだった。
手術のできる場所を紹介されたとしても、手術自体に不安があった。
初めての入れ歯で不安があったが、違和感が全くなく堅いものも食べられ安心。
自歯と同じ感じ。ピッタリはまっている。
歯科医師から一言
どんな治療方法にせよ、利点と欠点は必ずあります。
テレスコープデンチャーは入れ歯と被せ物を一体化した形の入れ歯です。
入れ歯という物体が、口の中に入るということが欠点かと思います。
しかし、以下の様な利点があります。
1.残っている歯の本数が少ないほど(失った歯が多いほど)、
治療回数が少なく、かつ、治療費を抑えることができます。
(インプラントや他の治療は残存歯が少ないほど治療費がかかります。)
(逆に2本くらいの歯の欠損の場合、インプラントの方が治療費を抑えられることもあります。)
2.従来の入れ歯は、バネのかかっている歯がダメになると作り直しをしなければなりませんが、
テレスコープデンチャーは修理して使えます。壊れないわけではありませんが、修理して長く使えます。
3.従来の入れ歯はバネでひっかけているので動きがありますがテレスコープデンチャーは動きが少ない。
4.動きが少ないのでよくかめます。
5.動きが少ないので異物感が少ない。
6.特別な外科処置、手術を必要としません。普通の歯科治療の範囲でできます。
よって高齢者、高血圧や糖尿病の方、その他の有病者、
インプラントをするには難しいと言われた方でもできます。
7.清掃がしやすい。介護をする方も、される方も非常に楽です。
口の中の衛生状態が、さまざまな全身疾患をひきおこすことが分かってきた現在、これは重要なことと思います。
現在使用している入れ歯が合わない、咬み合わせを考えた入歯症例
レジリエンツ・テレスコープ・デンチャー 症例3
2012.4初診の患者さんです。 入れ歯がどうしても合わないとの事です。
フェースボー 咬合器 という機器を用いて分析します。
画面中央にある線が本来あるべき歯の位置です。
大きく後ろに下がっているのがおわかり頂けるでしょうか?
前後差が非常に大きいという事がおわかり頂けるでしょうか?
レジリエンツ・テレスコープ・デンチャーは素晴らしい入れ歯です。
また、インプラントも素晴らしい治療方法です。
しかし、咬み合わせを考えない治療とは、 設計上問題のある建築物と一緒です。
この咬み合わせのままインプラントやレジリエンツ・テレスコープ・デンチャーを行っても、
それなりの結果は出るでしょうが、より良い設計で治療した方がなお良い結果が出ます。
まずは修理しました。
入歯修理の様子
前後差があまりにも大きかったので、いきなり自費診療をするのではなく、保険で作り直す事にしました。
前後差を考えた保険の入れ歯を作りました。
以前よりはるかに噛める様になったとの事です。
しかし、より一層噛める様にするためにレジリエンツ・テレスコープ・デンチャーを製作する事にしました。
上下の顎を同時に型取りした物です。筋肉の動きが型取り材に反映されています。
下あごには2本歯が残っていました。その歯にかぶせる様に入れ歯を装着します。
この義歯がレジリエンツテレスコープデンチャーです。
コーヌステレスコープデンチャーよりも歯への負担が少ないのが特徴です。
吸い付いてはずれません。患者さんからも 全く動かない とおっしゃって頂けました。
入れ歯装着
上顎は総義歯です。
顔の筋肉の動きを型取りに再現させたおかげで、
歯があった頃の口もとに非常に近いとおっしゃって頂けました。
生活に不自由無く、たいていの物は噛めると評価して頂けました。
今回の下あごのレジリエンツテレスコープデンチャの費用は 62万+税 でした。
内訳は以下の通りです。
被せ物16万×歯2本=32万
チタン金属床=30万 です。
上顎レジン床義歯=10万+税 でした。
インプラント治療ならば、場合によっては数百万かかると思います。また、外科処置も必要です。
しかも、インプラントは失った歯が多い程治療費が高くなりますが、この義歯は逆に安価になります。
健康に不安のある方、高齢者にはぜひともこのレジリエンツテレスコープデンチャーをお勧めします。
総入れ歯になる前に、ぜひ、やってみて下さい。
健康で動かない丈夫な歯が1本あれば、かなりの程度動かない・吸い付く入れ歯を作る事ができます。
入れ歯は所詮異物なので、歯医者の技術だけではなく患者さんの受け入れる能力によっても、評価が変わります。
年をとればとるほど、人間は新しい物事に慣れる能力が落ちてきます。
可能ならば70歳前までに、しっかり入れ歯を作ることをお勧めします。
インプラントも良いのですが、要介護になってインププラントが化膿した時に大変です。
入れ歯は一般的に下あごの方が難しいです。
舌ベロという筋肉の塊によって浮き上がったり、上顎よりも面積が小さいので同じ力でも圧力が大きくなって痛みが出やすかったりするからです。
予算に限りがあるならば、上あごよりも下あごの治療に費用をかけて下さい。
そしてインプラント治療が理想ですが、予算もしくは健康に問題があってインプラントができないときは
レジリエンツテレスコープデンチャーを強くお勧めします。
歯周病からの復活つけていてもわからない、よくかめる入れ歯(後編)
コーヌス・テレスコープ・デンチャー症例2 入れ歯・義歯(50才からの審美と健康)
上顎にあわせて下顎を作っていく
上顎が完成いたしました。
上顎は理想的な歯並びで作成しているため、下顎とはかみ合いません。
しかし、下顎はまだ、仮の入れ歯の状態です。
仮の入れ歯に手を加えてかめるように手直ししました。
従来の入れ歯の製作は凸凹な歯並びに合わせて製作していました。
凸凹な歯並びに合わせて作られた入れ歯は、やはり凸凹です。
これでは少しあごをずらしただけでも凸と凸がぶつかって入れ歯ががたついてしまいます。
オペラデンタルの特徴は不自然な歯ならびに合わせて入れ歯を作るのではなく、
理想的な歯並びになるよう、入れ歯を作っていくことにあります。
歯への被せ物
テレスコープデンチャーは、歯に被せ物をして、
さらにその上に入れ歯と一体化した被せ物をかぶせるというシステムです。
’80年代にテレスコープシステムが現れ、その中にはうまくいかない症例もありました。
うまくいかなかった症例のほとんどは、この歯への被せ物「内冠」の製作の失敗によるもの、
および設計上のミスだと言われております。
内冠は一般的には手作業で研磨をします。
ところが手作業で研磨したものの表面を顕微鏡下で見るとデコボコになっています。
これではテレスコープ義歯(テレスコープ・デンチャー)を出し入れするたびに歯にひっかかって、
歯をこじってしまい、歯の寿命を短くしてしまいます。これが当時の失敗症例の大きな原因と思われます。
そこで、写真のように、オペラデンタルでは機械で研磨をしています。
すると表面は顕微鏡下で見ても、鏡のように滑らかなのです。
これを鏡面研磨と言います。
上顎にあわせて下顎を作っていく
上顎が理想的な歯並びで製作されているため、下顎は無理なく、自然に製作することができます。
オペラデンタルでは精密な入れ歯を製作できるよう、
写真のようなあごの動きをシミュレートするアーティキュレーター(咬合器)という機器を用いております。
下顎の完成
上顎はかみ合わせの基準となるため製作に2ヶ月かかりました。
しかし、下顎は基準に合わせて製作できるため、半分の1ヶ月で製作できました。
あごの関節に問題のある方は治療期間がもう少し長くなります。
関節の問題を解決してからでないと、せっかく製作しても、作り直しになってしまうからです。
費用は¥1,000,000(税別)でした。
内訳は以下の通りです。
被せ物の部分¥160,000×5本=¥800,000(税別)
義歯の部分¥200,000(税別)
治療の終了
初診時
治療終了時
これ以上悪くならないよう、この状態を長く維持できるよう、
オペラデンタルでは3ヶ月に1度のメンテナンスを行っております。
「え~、やっと終わったのにまた来るの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、
定期健診を受けることは自分の歯を残すためには重要なポイントなのです。
1.治療だけでは歯は残らない
若いうちから定期健診を受けていると、
将来自分の歯を2倍以上残せることが統計学的に明らかとなっております。
2.歯を抜く原因は虫歯ではない。
40歳以上の方の歯を抜く大きな原因は虫歯ではなく歯周病です。
その予防および進行の防止のためにも3ヶ月に1度の定期健診をお勧めします。
オペラデンタルは全国でも数少ない歯周病菌の除菌療法をおこなえる医院です。
(歯周病:症例1 歯周病:症例2 歯周病:症例3 歯周病:症例4)
3.保険が利きます。
歯の残っている本数で金額は変わりますが、3割負担の方で最大2,500円くらいです。
歯科医師から一言
どんな治療方法にせよ、利点と欠点は必ずあります。
テレスコープデンチャーは入れ歯と被せ物を一体化した形の入れ歯です。
入れ歯という物体が、口の中に入るということが欠点かと思います。
しかし、以下の様な利点があります。
1.残っている歯の本数が少ないほど(失った歯が多いほど)、
治療回数が少なく、かつ、治療費を抑えることができます。
(インプラントや他の治療は残存歯が少ないほど治療費がかかります。)
(逆に2本くらいの歯の欠損の場合、インプラントの方が治療費を抑えられることもあります。)
2.従来の入れ歯は、バネのかかっている歯がダメになると作り直しをしなければなりませんが、
テレスコープデンチャーは修理して使えます。壊れないわけではありませんが、修理して長く使えます。
3.従来の入れ歯はバネでひっかけているので動きがありますがテレスコープデンチャーは動きが少ない。
4.動きが少ないのでよくかめます。
5.動きが少ないので異物感が少ない。
6.特別な外科処置、手術を必要としません。普通の歯科治療の範囲でできます。
よって高齢者、高血圧や糖尿病の方、その他の有病者、
インプラントをするには難しいと言われた方でもできます。
7.清掃がしやすい。介護をする方も、される方も非常に楽です。
口の中の衛生状態が、さまざまな全身疾患をひきおこすことが分かってきた現在、これは重要なことと思います。
歯周病からの復活 つけていてもわからない、よくかめる入れ歯(中編)
コーヌス・テレスコープ・デンチャー症例2 入れ歯・義歯(50才からの審美と健康)
どうしても残せない歯の抜歯
歯を一本でも残そうとすることは大切なことです。
しかし、一本を大切にすることによってその他の歯までダメになってしまうこともあるのです。
写真は右下の親知らずです。
歯の根の先についている粒々が、歯石です。
歯の表面には、骨や歯ぐきにくっつくように信号を出す組織があります。
しかし、歯石は歯の表面にくっつくことによって、その信号を遮断します。
骨や歯ぐきは「これは歯ではない、異物である。」と認識し、
歯から逃げたり、歯を押し出そうとしたりします。
これが歯周病です。
歯への被せ物
テレスコープデンチャーは、歯に被せ物をして、
さらにその上に入れ歯と一体化した被せ物をかぶせるというシステムです。
’80年代にテレスコープシステムが現れ、その中にはうまくいかない症例もありました。
うまくいかなかった症例のほとんどは、この歯への被せ物「内冠」の製作の失敗によるもの、
および設計上のミスだと言われております。
内冠は一般的には手作業で研磨をします。
ところが手作業で研磨したものの表面を顕微鏡下で見るとデコボコになっています。
これではテレスコープ義歯(テレスコープ・デンチャー)を出し入れするたびに歯にひっかかって、歯をこじってしまい、歯の寿命を短くしてしまいます。これが当時の失敗症例の大きな原因と思われます。
そこで、写真のように、オペラデンタルでは機械で研磨をしています。
すると表面は顕微鏡下で見ても、鏡のように滑らかなのです。
これを鏡面研磨と言います。
かみ合わせをしらべる
いくら製作物がすばらしくても、
かみ合わせが良くなければ入れ歯は安定しません。
「かみ合わせをみる」とは建築にたとえるならば、構造計算・設計です。
どんなにすばらしい天然のヒノキをつかっても、設計がうまくいかなければ、耐用年数は短くなります。
オペラデンタルの特徴は「コーヌスデンチャー」ではなく、
「かみ合わせを考えた入れ歯の治療」という所にあります。
上顎の義歯完成
まず、上の入れ歯を完成させました。
理想的な歯並びで製作するため、現時点では下の歯とはかみ合っておりません。
理想的な歯並びで上の義歯を作り、それに合わせて下の義歯を作り、
すべてを理想的な状態に作り上げていきます。
費用は¥1,000,000(税別)でした。
内訳は以下の通りです。
被せ物の部分¥160,000×5本=¥800,000(税別)
義歯の部分¥200,000(税別)
治療前の写真
上顎の入歯装着
上顎にテレスコープデンチャーが装着されました。
下顎には仮の入れ歯が入っています。
これに合わせて下顎にも義歯を製作していきます。
歯科医師から一言
どんな治療方法にせよ、利点と欠点は必ずあります。
テレスコープデンチャーは入れ歯と被せ物を一体化した形の入れ歯です。
入れ歯という物体が、口の中に入るということが欠点かと思います。
しかし、以下の様な利点があります。
1.残っている歯の本数が少ないほど(失った歯が多いほど)、
治療回数が少なく、かつ、治療費を抑えることができます。
(インプラントや他の治療は残存歯が少ないほど治療費がかかります。)
(逆に2本くらいの歯の欠損の場合、インプラントの方が治療費を抑えられることもあります。)
2.従来の入れ歯は、バネのかかっている歯がダメになると作り直しをしなければなりませんが、
テレスコープデンチャーは修理して使えます。壊れないわけではありませんが、修理して長く使えます。
3.従来の入れ歯はバネでひっかけているので動きがありますがテレスコープデンチャーは動きが少ない。
4.動きが少ないのでよくかめます。
5.動きが少ないので異物感が少ない。
6.特別な外科処置、手術を必要としません。普通の歯科治療の範囲でできます。
よって高齢者、高血圧や糖尿病の方、その他の有病者、
インプラントをするには難しいと言われた方でもできます。
7.清掃がしやすい。介護をする方も、される方も非常に楽です。
口の中の衛生状態が、さまざまな全身疾患をひきおこすことが分かってきた現在、これは重要なことと思います。
歯周病からの復活つけていてもわからない、よくかめる入れ歯(前編)
コーヌス・テレスコープ・デンチャー症例2 入れ歯・義歯(50才からの審美と健康)
50歳代の男性。「歯がグラグラして痛い、かめない、見た目も良くない。
インプラントにしたい」ということで来院されました。
初診時:11月下旬
見た目を気にしているらしく、マスクをなさって来院されました。
入歯完成:6月中旬
治療が終了した所です。
もう、マスクはされません。
インプラントではなく、テレスコープ義歯となりました。
患者様の希望をなるべく受け入れたかったため、最後まで、インプラントができるかどうか、さまざまな検査をしました。その検査が、1月下旬までかかってしまいました。
治療が始まったのは2月からでしたので、約4ヶ月の治療期間でした。
どのように治療が進んでいったかを順を追って見て行きます。
初診時エックス線写真
口全体の写真を撮りました。
インプラントとはあごの骨に金属の土台を植え込み、その上に人工歯を被せるという治療法です。
自分の歯と同じようにかむことができ、しかも入れ歯のように出し入れする必要はありません。
しかし、大きな難点がありました。あごの骨が少ないのです。
あごの骨は青線上にあります。上あごの場合、インプラントを植え込むと赤線まで達してしまいます。
赤線より上は上顎洞と呼ばれる空洞になっています。蓄膿症でウミがたまる場所です。
ここにインプラントが突き抜けると上顎洞が化膿し、強い痛みと腫れが引き起こされます。そのためインプラントはできません。
下あごの赤線は下顎管という神経の管です。
ここを傷つけると顔半分の感覚が麻痺し、顔がゆがんでしまいます。
しかし、なんとか患者様のインプラントという希望をかなえたく、
CT画像診断によってインプラントができるかどうか再検討しました。
写真はステントというものです。
インプラントを打ち込む場所を事前に予測するために作ります。
これを口に付けてCT撮影することによってインプラントを打ち込む場所の骨の位置を知ることができます。
インプラント手術をする時のガイドにもなります。
CT撮影結果
義CT撮影の結果、インプラントをやれるかやれないかの瀬戸際であることがわかりました。
写真は下あごのCT撮影の画像解析をした図です。
しかし、まだ問題はあります。それは歯周病の問題です。
この時点で、かなり歯周病による歯ぐきの化膿は治まっていました。
しかし、歯があるかぎり、歯周病は完治しません。
歯周病は糖尿病と同じように一度なってしまったら進行を遅らせることはできますが、
完治することはないのです。歯周病の菌によってインプラントも歯周病になってしまうかもしれないのです。
せっかくインプラントが成功しても、またダメになる可能性について、
ダメになったら最初からやり直ししなければならないことについて、
治療費について等を検討いたしました。
残っている歯が1~3本の場合に有効的な入れ歯治療症例
レジリエンツ・テレスコープ・デンチャー 症例2
40代男性、2012年4月初診。
歯周病がひどく、上の歯がまとめて抜けてしまったとのことです。
初診時
上は1本も歯が残っていません。
下は左の親知らずと犬歯がかろうじて残せる程度です。
しかし、親知らずは極端に傾いている為、入れ歯のばねをかけることができません。
上下インプラントも計画したのですが、費用の問題および骨の厚みの問題があるため、できませんでした。
歯科の治療において上下どちらかに費用をかけるならば、下顎に費用をかけてください。
上は入れ歯でも比較的何とか咬めるようになります。
下はしっかりしたものを作らないと、なかなか痛みが取れません。
下顎は将来的に犬歯や親知らずも無くなり、総入れ歯になる可能性があったため、
1本インプラントを入れました。
これで使える歯は、犬歯とインプラントの2本になりました。
残っている歯が1~3本ならばレジリエンツテレスコープが非常に良いです。
コーヌステレスコープに似ていますが、残っている歯が1~3本の時にコーヌステレスコープをすると、
歯への負担が大きすぎて、歯にダメージを及ぼすことがあります。
レジリエンツテレスコープは歯への力をあまりかけず、
歯ぐきに沈み込むことで入れ歯が落ちないようにする義歯です。
インプラントですべての歯を作るよりも、はるかに費用を抑えることができます。
それでいて入れ歯ではあっても動かず、結構噛めます。
入れ歯装着
2013年12月30日装着です。下の入れ歯がレジリエンツテレスコープデンチャーです。
その後の調整は1回だけでした。
大好きな焼肉、とんかつ、問題なく食べることができたとのことです。
入れ歯をはずした状態
入れ歯を外した下の歯茎の写真です。
向かって左がインプラントです。向かって右が犬歯です。
たとえ犬歯が無くなっても、このインプラントがしっかりしている限り、
今回作ったレジリエンツテレスコープデンチャーは問題なく使えます。
この金属の被せ物に下の写真の金属部分がはまることによって、入れ歯が安定します。
下の入れ歯:レジリエンツテレスコープデンチャの費用は 83万(+消費税) でした。
内訳は以下の通りです。
インプラント21万
内冠・外冠32万(16万×2本)
チタン床義歯30万です。
保健の入れ歯と比較したら、非常に高額かもしれません。
しかし、もしインプラント、例えば オールオン4 で行った場合、250万~300万程度かかります。
大きな外科処置も必要です。
しかも、そのインプラントの内、1本だけがダメになっても、結局全滅になる可能性があります。
そのことを考えると、今回のレジリエンツテレスコープデンチャーはコストパフォーマンス(費用対効果)と安全性が高い治療と言えるのではないでしょうか。
治療を終了した上での反省点としては、予算が許すならば上顎に1本だけインプラントをして、上顎もレジリエンツ・テレスコープ・デンチャーにすればより一層噛めたのではなかったか、という事が挙げられます。
バネの見えない、がたつかない部分義歯【歯周病の治療と強く噛める入歯】
コーヌス・テレスコープ・デンチャー症例1
60代男性です。
「下の入れ歯が合わない、残っている歯が虫歯で、しかもグラグラする。」ということで来院されました。
初診時
歯ぐきには、歯ぐきが化膿することによってできたおできがあります。
右下(写真向かって左)へのインプラントも検討したのですが、
骨の残っている量、歯周病の状況から、テレスコープデンチャーを希望されました。
終了時
歯周病の状況が思わしくなかったため、8ヶ月ほどかかりました。
入れ歯を装着すると、バネが無いため、入れ歯であることはわかりません。
入れ歯をはずすと、残っている歯が金歯となっているのがわかります。
歯周病の治療を行うことによって歯ぐきが引きしまり、
上の歯は初診時よりも歯の根が見えるようになりました。
歯ぐきが腫れて膨らんでいる時に製作されたものであるため、
歯と被せ物の間に多少段差があります。私としては気になるのですが、
患者様の希望により、そのままとしました。
テレスコープ・デンチャー
残っている歯への被せ物と一体化したこの入れ歯をテレスコープ・デンチャーといいます。
この入れ歯の最大の利点は、
例え1本、2本抜歯することになったとしても、作り直す必要が無いことだと思います。
自前の歯ですら病気によって失うのですから、
人工的に作られたものは、なおのこと、失う可能性が高いと思います。
「壊れない、完成されたもの」を作るのではなく、
「万一の場合に備えることができるもの」を作るということも大切であると思います。
金額は\1,160,000(税別)でした。
その内訳は以下の通りです。
被せ物の部分 \160,000×6本=\960,000
義歯の部分 \200,000
歯科医師から一言
どんな治療方法にせよ、利点と欠点は必ずあります。
テレスコープデンチャーは入れ歯と被せ物を一体化した形の入れ歯です。
入れ歯という物体が、口の中に入るということが欠点かと思います。
しかし、以下の様な利点があります。
1.残っている歯の本数が少ないほど(失った歯が多いほど)、
治療回数が少なく、かつ、治療費を抑えることができます。
(インプラントや他の治療は残存歯が少ないほど治療費がかかります。)
(逆に2本くらいの歯の欠損の場合、インプラントの方が治療費を抑えられることもあります。)
2.従来の入れ歯は、バネのかかっている歯がダメになると作り直しをしなければなりませんが、
テレスコープデンチャーは修理して使えます。壊れないわけではありませんが、修理して長く使えます。
3.従来の入れ歯はバネでひっかけているので動きがありますがテレスコープデンチャーは動きが少ない。
4.動きが少ないのでよくかめます。
5.動きが少ないので異物感が少ない。
6.特別な外科処置、手術を必要としません。普通の歯科治療の範囲でできます。
よって高齢者、高血圧や糖尿病の方、その他の有病者、
インプラントをするには難しいと言われた方でもできます。
7.清掃がしやすい。介護をする方も、される方も非常に楽です。
口の中の衛生状態が、さまざまな全身疾患をひきおこすことが分かってきた現在、これは重要なことと思います。
見た目も美しく咬める入歯症例
レジリエンツ・テレスコープ・デンチャー 症例1
50代女性、平成17年10月初診。
咬めるようになりたい、
見た目も美しくなりたい、とのことでした。
初診時
傾いているように見えます。
これは左下(向かって右)に親知らずがあり、その親知らずのために右側でしかかめなくなり、長年の習慣の結果、曲がってしまったと考えられます。
また、部分入れ歯の場合、歯が残っているにもかかわらず上下で咬み合う歯が無い事があります。
そのような場合、歯が入れ歯を粘膜面に押し込むため、入れ歯が傾いてくる事がよくあります。
義歯をはずした所
黒く見えるのは歯石です。
平成18年9月、治療が終わった所
何とか傾きを修正できたと思います。
きれいな口元になったと思います。
患者様には「何でもよく咬めるし、見た目もきれい。」と、大変高い評価をして頂き、喜んでいただけました。
では、どのような義歯が入っているのでしょうか?
上の義歯
総入れ歯のようですが、実は歯が残っているので部分入れ歯です。
裏面
金色の部分に歯がはまります。
上あごの写真
残った1本の歯に金冠が入っています。
そこに入れ歯の金冠がはまります。
たった1本でもしっかりした歯が残っていれば、
総入れ歯よりはるかに安定した入れ歯を作ることができます。
義歯を装着した所
強く吸い付いて、なかなかはずせません。
それでいて、歯への負担は小さくすみます。
次に下の義歯
義歯を外した所
義歯の裏面
入れ歯の金属部分に歯の金属冠がはまります。
この症例はレジリエンツ・テレスコープ・デンチャーという義歯で治療しました。
コーヌステレスコープは歯に着けた金歯(内冠)に被せ物(外冠)がしっかりとはまる事で入れ歯が落ちないようになります。しかし、残っている歯の本数が3本以下ですと、歯にかかる力が強すぎて、歯がダメになってしまう可能性があります。
レジリエンツテレスコープは歯への力をあまりかけず、歯ぐきに沈み込むことで入れ歯が落ちないようにする義歯です。
上顎の義歯の費用は¥410,000(税別)でした。
内訳は以下の通りです。
被せ物の部分:¥160,000×1本(残っている歯の本数)
義歯の部分(コバルトクロム) :¥250,000
下の義歯の費用は¥420,000(税別)でした。
内訳は以下の通りです。
被せ物の部分:¥160,000×2本(残っている歯の本数)
義歯の部分(プラスチック) :¥100,000
保健の入れ歯と比較したら、非常に高額かもしれません。
しかし、もしインプラント、例えば オールオン4 で行った場合、250万~300万程度 かかります。
大きな外科処置も必要です。
しかも、そのインプラントの内、1本だけがダメになっても、結局全滅になる可能性があります。
そのことを考えると、今回のレジリエンツ・テレスコープ・デンチャーはコストパフォーマンス(費用対効果)と安全性が高い治療と言えるのではないでしょうか。
歯科技工:HAMdentテクノロジー,羽村紀雄氏 tel 042-543-4194
義歯専用症例サイト何故このサイトを作ったか。
●何故このサイトを作ったか。
現在、機能回復の方法として インプラントが主流となりつつあります。
義歯と違って体積が小さく、異物感が少なく、
動かないので痛くないからです。
しかし、大きな欠点が3つあります。
手術の痛み、費用、化膿したときの対応です。
糖尿病など全身疾患があって外科処置ができない方、
外科手術に恐怖を感じる方に、どのような治療をしたら良いか?
保険診療の入れ歯ではとても満足できないが、さりとて
インプラントでは高額すぎるという方に、
どのような治療を提示したら良いか?
歳をとり、体力が低下し、介護が必要となって、
歯も自分で磨けない様になれば、
どんな方でもインプラントが化膿するリスクが高まります。
インプラントは化膿して抜く事になったら、全て最初からやり直しです。
悪くならない治療ではなく、悪くなっても対応できる治療法は無いか?
このような疑問に応える為に、このサイトを開設しました。
●入れ歯の復権
現在、機能回復の方法として インプラントが主流となりつつあります。
義歯と違って体積が小さく、異物感が少なく、動かないので痛くないからです。
しかし本当にそんなに入れ歯はよくないのでしょうか?
総入れ歯は確かに本当に難しいです。
しかし、部分入れ歯は噛み合わせを考えて作っていけば、かなりの確率で使ってもらえるようになります。
インプラントを希望して来院された方が、当医院の保険の部分入れ歯で満足されてしまうケースも多々経験しています。(病院経営にとっては良く無い事かもしれませんが、患者さんに喜んでもらい評判が良くなれば、いつか報われる日も来るだろうと思っています。)
入れ歯はインプラントと比較して、危険性が全くありません。
作り直しではなく、修理ができるなど、
メリットも数多くあります。このサイトをご覧になれば、
インプラント以外にも選択肢はある入れ歯にも
種類があることがわかっていただけると思います。